愛をする



twitter夢垢(@szk_ym)にて呟き溜めたSS集。多少の加筆修正済です。

2013.2.20-2013.7.7

時系列に並んでいます。上に行くほど新しい。
直で飛びたい方は下のリンクからどうぞ。

*clap*

tiny, tiny, tiny / 転んだら溢れて仲直り : 英
アンカーの不在 : 普
皮膚下の考察 : 仏


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tiny, tiny, tiny
英:2013.7.7
title:コペンハーゲンの庭で

「許さなくていいよ。だから要らないよ」

何も、怒ってなんかいないのに。泣かなくていいのに。無理するくらいなら俺の側にいろよ。春になったら一緒に桜を見て、夏になったら花火を見て、秋になったら紅葉を見て、冬になったら雪を見る。
視力に依存してばかりの季節だが、やはり失くしたくない。俺達は本当は見ることしかできない。目に見えるものだけがすべてではなくても、信じるんだ。 お前の身体からは陽のにおいがする。愛しくて鼻が折れてしまいそうだ。そこに視力はない。
お前の手は思ったよりも冷たい。このまま死んでしまったら、という危機感が俺をいつも襲う。そこに視力はない。
お前の声は何を介して伝わっているのだろう。空気なんかよりも純度の高い、別の気体、あるいは液体、固体が、担っているような気がする。そこに視力はない。

「でも、アーサーの優しさは、ちゃんと伝わってるよ。大丈夫だよ」

雪崩のように押し寄せる寂寥は音もなく俺の思考を飲み込んだ。間違いだった。見えるだけじゃ、見るだけじゃ、駄目だ。俺は手も足も口もその他の身体の全部もあるけれど、何も無いんだ。
中途半端な手で彼女の冷たいそれを握る。口が悪い上に口がきけなくて、ごめんな。

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アンカーの不在
普:2013.5.20

まさか自分がこんな甘ったるい空間を考えるとは思ってもみなかった。友人達を騙して無理矢理作った時間は、俺の足よりも速い。何も切り出せなくてどんどん更けていく夜に焦りを感じながら呑んだビールは当然のことながら味がしなかった。

「元気にしてたの?」
「ああ」
「お仕事大丈夫?無理してない?」
「上司も部下も優秀だからな、俺は多分楽してる」

は酒が呑めないので水をちびちび口に入れている。爪にはピンクのマニキュアが塗られていてきれいだ。

「それで、今日はどうしたの?」

本日何度目かの質問に、俺は決意が消沈しかけて自信をなくした。情けないことだった。は俺の目を見て待ってくれている、気遣いの上手い女だが、静かな拷問も同じくらい達者だと俺は思う。彼女には口が裂けても言えないが。

「まあ…その、なんだ」
「何よ」

俺が口ごもっている間にが勝手に新たな酒を注文した。正直俺はもう呑みたくないのだが、仕方がない。しかし店員が持ってきた酒を彼女は受け取り、そのままごくごくと呑んだ。呆気に取られて俺は止められなかった。気がついたら想像以上に減っていた。

「おい」

彼女から取り上げようとすると、不満そうに逃げた。

「お前、呑めないくせに。やめろよ」
「当ててあげようか」
「あ?」
「ギル、好きな人できたね」

俺の手から箸が落ちる。

「お箸は上手に持てた方が好かれるよ」

氷の上を滑るように聞こえる声に狼狽える。箸を拾って寄越されたがろくに感謝も言えなかった。

「まあ、頑張ってね」

少しして小さくjaと返事するのが精一杯で、何一つ進展しない。この流れで、それはお前だと言えたら、どうなっていただろう。考えても、意味のないことだ。

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転んだら溢れて仲直り
英:2013.5.3

「近い」
「……」
「やめてね?カークランド君」
「…それ」
「ん?」
「俺何かしたか?」
「何の話?」
「確信犯だな」
「どうでもいいけど離れてよカークランド君」
「お前その呼び方やめろ」
「なんで?」
「アーサーって呼べよ」
「馴れ馴れしいから嫌だ」
「…お前は俺の女だろ」
「私は貴方のクラスメートです」
「怒ってるのか?頼むからやめてくれ。へこむ」
「やわな神経してるのね。さっさと離れて。きらい」


顔を近付ければ本当に拒絶するので泣きたい気分だ。
だが理由が分からないので謝りたくても謝れない。あれこれ思考を巡らせても、を不快にさせるようなことをした記憶はまったくない。多分、こういう無自覚なところが一番彼女の癪に触っているのだろうが。

「悪かったよ」
「何に対して謝ってるの」
「何も思いつかねぇんだ。だからそのことに対して」

突然目の前が暗くなる。ひんやりとしたもので覆われたようで、少し動揺したのを隠すようにそれに触れると彼女の手だった。同時に彼女の溜め息が聞こえる。

「動かないで聞いて」
「おう」
「昨日の放課後女の子と一緒に居たね」
「なんだ嫉妬か。あれは生徒会の後輩だ」
「あの子貴方のこと好きなのよ」
「はあ?」
「有名よ。アーサーくらいよ知らないの」

そんなことあるか。確かに彼女は仕事が早いし気が利くしいい後輩だとは思っていた。だが、自慢じゃないが俺は基本的に他人から好かれるような男ではない。去年も新入生を生徒会に引き込むのに苦労したんだ。
そういえば、 その彼女は最初から生徒会に入ると言ってくれていたような気がする。俺に近付くための口実だったのか?本当に?

「やめてよ」
「馬鹿。浮気なんかするかよ」
「その子のこと考えるのやめてって言ってるの…!」

珍しく随分と可愛いことを言うなと呆気に取られていると、唇にやわらかいものが当たる。離れた後ベタつきと彼女のリップの甘い香りを感じて不覚にも興奮する。相変わらず前が見えないが彼女の頬が赤いのが分かる。

「…カークランド君なんか一人でヤってろ」

やや涙混じりの声に俺の中の何かが弾けて、視界が晴れた途端逃げ出したを全力で追いかける。どうやって絆してやろうか。

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皮膚下の考察
仏:2013.3.14
title:√A

「いつまでそんな顔してるの。笑ってた方が可愛いよ。美人が台無し」
「……私は食べ物をあげた」
「え?」
「本買って、練習して、舌が肥えてる貴方に美味しいって言ってもらえるように頑張った。それなのにキスで返すって何。美味しくないならそう言えばよかったのに」
「美味しかったよ」
「そうね、フランシスは自分で何でも作れちゃうもんね」
が作ったのと俺のは違うよ。愛情、とか」
「食べれば同じよ」
「食べなきゃ分からないんだよ。まあ、普段料理なんかしないが作ってくれたってことが一番嬉しかったけどね」
「やっぱり美味しくなかったんだ」
「そんなことないよ。キスで返したのにはちゃんと理由があるの。お兄さんは料理得意だから、皆それに慣れちゃってるでしょ?だからどんなに気持ちを込めて作ったって、それが料理である以上伝わりにくい。お兄さんもまだまだってこと。でも愛情は示したいし、それならやっぱりキスでしょ?」
「キスだっていつもしてるじゃない」
「キスは不変に思えるけど不変じゃないよ。一つ一つにちゃんと質の違う重みがあって愛情が籠もってるの」
「意味が分からないけど」
「今から証明してもいいよ」
「…いらない。それに私、キスで愛のすべてが伝わるなんて思ってないの」

別に、物が欲しかったわけではない。キスで何もかも解決できると自信ありげのフランシスに、ちょっと考えてしまったから。

「それに、重ければいいってものじゃないわ。バランスが大事なのよ。チョコレートみたいな甘ったるさも、そのチョコレートを焦がす炎も、冷えて固まる時間も、みんな必要なんだと思う」
「不思議な子」
「そう?」
「でものそういうところ、お兄さん好きだよ」

何故か嬉しそうな彼につい私も声を出して笑う。

「何それ。変な人」
「うん、その顔が一番可愛い」

唐突に唇が重なった。

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