収束する恋慕


一体何が普通かなんて、私には分からない。ルー君に告白されて、私も好きと返事をしたあの日から、私は何一つ変わっていないし、変わろうともしていなかった。


「ねえ」
「何?」
「どうしてまだ手を繋いだままなの」


二人で初めてテーマパークに来ていた。人気だというアトラクションには凄い行列が出来ていて、幸い今日はなかなか過ごしやすい天気だったので良かったけど、私は正直ちょっと疲れていた。というのも、動きやすい方がいいと思ってちょっとヒールの低いパンプスを選んできたものの、新しいそれはまだ固くて歩く度に地味に痛い。勿論そんなことはルー君には関係ないし100%私の責任だけど、休日でごった返す園内の空気や人のにおいに当てられたのもあって余計にまいっていた。


「おいらと手繋ぐの、嫌?」
「そうじゃないけど…もう列に並んでるからはぐれる心配ないのに」
「別に迷子にならないように手を繋いでたわけじゃないよー。恋人だからね、繋ぐもんなんだよ」


自分で言ってちょっと照れている彼は男の子なのに女の私よりも絶対可愛いと思う。それに、そんなことは、普通は女の私が言うべきことだろうとも思った。


「疲れちゃった?何か飲み物でも買ってこようか。は並んでてね」
「あ、大丈夫…待って!」


私の声も聞かず彼は行列から外れて脇をすり抜けていった。その間に列が少し進んだので詰める。
私の前では仲良さげなカップルが人の目も気にせずいちゃいちゃしている。ルー君も人前だろうが二人きりだろうが、ちょっと激しいスキンシップを求めてくるので私は良い意味で困っていた。勿論ずっと好きだった彼と触れ合うのは嬉しいことではある。だけどいつも私から引いてしまっている。他の女の子なら、私よりも断然上手く恋人らしいことが出来るのに、私には出来なかった。こんな私で大丈夫なのかしら、と不安になった。好きなのに、避けているような行動ばかりして。


「ただいま!」
「…あ、おかえり」


息を弾ませながら戻って来たルー君は相変わらず笑顔だ。彼からジュースを受け取って、お金を出そうとバッグの中をいじるとその手を制止される。そしてそのまま再び手を繋いだ。私は彼を見上げる。するとルー君と目があって、にっこりと微笑みを返される。私はどきりとして一瞬目線を下げるけど、何故か負けた気分になって再び彼を見つめた。そして不思議そうに彼も見返してくる。だけど暫くすると彼が恥ずかしそうに瞬きした。


「…なに?おいらの顔に何か、」
「何でもないよ。見てるだけ」
「…そっか」


遂には顔を真っ赤に染め上げたルー君につられて私の顔にも熱が集まってくるのが分かる。それでもお互いにがっちり視線を合わせて外さなかった。そして彼はゆっくり顔を近付けてくる。私はそれを黙って見つめていた。
唇が触れるか触れないかの距離に近付いた時、ルー君が慌てて私から離れて、列の前に視線を戻した。私達の前にいたカップルが係員によって誘導されていって、状況を理解した私はどっと大きく心臓が動いたのを感じた。
アトラクションを降りた後、私達は手を繋いでぎこちなくパーク内を歩いた。緊張して自然と会話が減ってしまった。
夜になって、綺麗なイルミネーションを眺めている時に急にキスをされた。


「……」
「…続き、みたいな」
「…うん。嬉しい」


そう言って少し身体を寄せると、ルー君がほっとしたように笑った。