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title:深爪
「一緒に入ろうか」
私の作った肉じゃがを早くも食べ終えたルー君がにっこりと笑う。私はどうしたものかと視線を彷徨わせた後、すっとぼけた様子で首を傾げる。 「何の話をしてるの?」 「お風呂、一緒に入ろうか」 「入らないよ」 いや、分かってたけど。 付き合って半年、キスまで済ませたのにその先には一向に進まず、彼は多分色々考えていたことだろう。そんな時に私の家にお泊りすることになったら、もうそういう流れに持っていくしかないのだ。私が彼の立場でもそうするだろうし、セックスのお誘いを受ける覚悟はできていた。そもそも私のせいだ。今までちょっと良い雰囲気になってもそれに耐えられなくて逃げたのは私の方なのだ。処女でもないくせに、どこに残っていたのか薄紅色の純情が私を生娘へと逆戻りさせ、私に伸ばされた彼の手をするりと躱す。恥ずかしかった。ルー君のことは大好きなのに、セックスを越えたらもう飽きられてしまうんじゃないかとか、愛しさで爆発するんじゃないかとか、恐ろしい不安が押し寄せる。 「ー」 「…甘えても駄目」 まだ食べている私の元へ来て後ろから抱き締める彼の温もりが背中から伝わる。ああもう。本当に愛おしい。だけどセックスもしていないのに、お風呂に一緒に入るのはハードルが高すぎる。明るいところで服を脱いで裸を見られるなんて、羞恥だけで逝けそうだ。ここでもまた純情を発揮する自分に嫌気が差すが、流石に自分の命と引き換えにはできないので仕方がない。そうできる程、愛の重みをまだ知らない。 「じゃあさ、こうしようか」 「え?」 彼は後ろから私の顔を覗き込んで、突然の至近距離にびっくりして箸を落とした私に触れるだけのキスをする。私の唇をぺろりと舐めたルー君が幸せそうな溜息を小さく吐いた。 「先にえっちしよ。その後だったら一緒に入れるんじゃない?」 提案のつもりだろうが、YES以外の返答は許さないと言わんばかりの目が私を捉えて離さない。いつになく真剣な顔がいやに格好良いのが悔しいが、結局そのままひれ伏すように頷いた。 事後、ルー君の用意周到さを目の当たりにした私は確信する。最初から彼はこうなるよう仕向けていたんだ。 |