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掃除を終わらせて、荷物を持ったら足早に階段を駆け下りる。理由は簡単だ、を待たせているから。先に帰ってていいよと言う前に、一緒に帰りたいからと上目遣いで遮られたらもうたまったもんじゃない。おいらだけではなく男は皆そうだと思う。睫毛に縁取られたまあるい水たまりと小さくてほんのり赤い唇の破壊力たるや。いわゆる惚れた弱みというやつだ。彼女は昇降口付近で友達とお喋りしながら待っているらしい。その友達とはもしかしなくてもあのフライパン女で、おいらはあいつのことをいけ好かないと思っているけど、だからといっての交友関係にまで口出しする気はないしと仲良くしてくれているようなのでまあそこは良しとする。良しとするが出来ればおいらが昇降口に着くまでに消えていてほしいな。あいつは多分ローデリヒを待っているのだろう。ローデリヒは確か体育館掃除だったかな。頑張れローデリヒ。早くあのじゃじゃ馬を連れ出して行ってよ。 そんなことを考えながらぐるぐると階段を降りていくと、下駄箱の前にが立っていた。あのフライパン女は居ない。やったね。ありがとうローデリヒ。それと神様。 「俺と、付き合って下さい」 まで一直線だった。それを止めたのは、の前に現れた隣のクラスの男だ。彼は今に何て言ったのだろう。何で顔が赤いんだろう。ほら見ろ、だってぽかんとしているよ。 「俺、さんが好きです」 「…え、あ、はあ」 男は彼女の手を握って念を押すようにもう一度付き合ってほしいと言った。おいらはただその場に立ち尽くす。おいおい神様。酷い仕打ちじゃないか。これならあのフライパン女の方がマシだったよ。何だよこのトレードは。 「あの、私…」 が困ったように身を引くけど、男に手を掴まれているせいで逃げられない。そのうちに目が逸らせなくなったのか、恥ずかしそうに男を見つめていた。可愛い。いや問題はそこじゃない。男もむかつくけど、彼女の方もどうしたんだろう。いつもならそんなやつ軽くあしらえるはずなのに。どうしてお前も頬を赤らめているの?そんな可愛い反応したら、肯定だと受け取られても文句言えないよ、。彼女の表情が、おいらが告白した時の彼女のそれと重なる。いよいよ耐えられなくなって、おいらは足を一歩大きく前に踏み出した。 「返事は、ごめん、なんだよ!」 自分の靴を乱暴に取り出して、反対側の手で彼女の腕を掴んだ。茫然とする男を一瞥してそう告げると彼女を連れて走り出す。昇降口もなかなか暑かったけど、外はもっとむわんとして不快だった。走れば走る程周りの湿気が汗に変わっていくようで鬱陶しい。それなのに何故か、清々しい心。 「ルー君、ちょっと、…あ、あついって」 二人で息を切らしながらしゃがみ込む。彼女にペットボトルを渡すと半分くらい一気に飲まれた。 「さ、さいてい…あついし、しんどいし…もうベタベタで嫌になる」 「まあ…それはごめん。でもがさっさと断らないのが悪い」 「別に…承諾する気なんか無かったわよ。タイミングを逃しただけ」 「あの顔は駄目だよずるい。現にあいつお前にもっと触ろうとしてたし。反省してね、!」 「何それ、ルー君何様のつもりなの」 それにしても確かに暑い。必死だったとはいえ走ったのは間違いだった。だけどやっぱりおいらは悪くないと思うんだ。寧ろヒーローじゃないかな。アルフレッドさんじゃないけど。 未だにぐちぐち言ってて全然反省する気のないに、八つ当たりのようなキスをする。おいらは優しいからお仕置きはしないであげるけど、ボランティアじゃないんだ。だからお駄賃貰うね、。
せめてA
過去拍手御礼(2015.7.25-2015.9.25)
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