|
まるで忍者にでもなった気分だ。外を歩く時は出来るだけ日陰を、それも早足で移動する。提案者はブル君だったけど、不満は全くない。早く冷房の効いた室内へ行きたい。
「あー、しんどい」 「ちょっとしか歩いてないのにね」 いつまでも入口付近に居ては邪魔なので、涼しい空気を感じながら歩き出す。 夏休み、私はブル君と街に遊びに来ていた。趣味が合うのは既に分かり切っていたことだったので、朝から二人でやることと言えば書店巡りだ。図書館は少し遠いので今日は行かないことにしている。向かっている途中で溶けるだろうし、私も彼も暑いのは苦手だ。本は快適なところで読みたい。 色々と見ていたらいつの間にか太陽は既に真上にあって照り返しもきつい時間になっていたので、ご飯を食べに一度駅前へ戻ってきた。確かこのビルの上の方にカフェやレストランがあったはずだ。 「そういえばここの5階でエリザがバイトしてるらしいよ。雑貨屋さん。後で行ってみない?」 「ああ、じゃあ飯の後にでも」 「ね、働いてるの見てみたいし、あと純粋に雑貨も気になるし」 「ところではなんか食いたいもんある?」 「うーん…ブル君は?」 「俺は何でも食べる男なんだわ」 「じゃあ、パスタで」 エスカレーターを上って目的の店に着くと、夏休みだからか少し混んでいた。店員さんに何名様ですかと聞かれ二人と答える前に、後ろから聞き覚えのある声が三人と答える。 「あ、エリザ!」 「、久しぶりね!生きてた?溶けてない?ブル君は…半分溶けてるわね!ねえ、私もご一緒してもいいかしら?」 「勿論!いいよねブル君」 「好きにしろだわ…つかエリザお前バイトは?」 「お昼休憩なの。いつもは一人なんだけど、二人を見かけたから急いで来たのよ」 席に着いてメニューを眺めながら他愛ない話をする。女二人で盛り上がっている間、ブル君は水をちびちび飲んでいた。 「今日はデートなの?」 「そうよ」 「…ごっほ」 「ブル君大丈夫!?」 「あら、深い意味は無かったんだけど」 「ふ、深い意味って何なんだわ」 「意識してるのね。やだもう、照れないでよ」 にやけるエリザが噎せて涙目のブル君にこそこそと何かを喋ると、ブル君が水の入ったコップを零しそうになる。それを見てエリザが笑った。何が何だか分からなかったけど、少し溢れた水をブル君の代わりに拭くとブル君が慌てて私から布巾を奪う。エリザは耐えられないといった感じでお腹を抱えて笑い声を押し殺していた。 「お、ま、え!」 「だ、だって…ふふふ……へえ、ブル君がねえ」 「ブル君がどうかしたの?」 「は聞かないでほしいんだわ…!」 「ブル君ったら酷いわ!ねえ、私達だってデートするわよね?」 「うん、二人だと店周るの楽でいいよね」 「……」 そんな風に楽しみながら三人でご飯を食べて、午後もシフトが入っているエリザと別れた。彼女の働く雑貨屋さんに行く前に他の店を見て回っている時に、ふと思ったことを口にする。 「それで、結局エリザと何話してたの?」 「あれは、忘れてくれ…」 「そう言われると余計気になる…ブル君エリザと仲良いね」 「幼馴染みたいなもんだわ」 「ふーん。羨ましい」 「…どっちが?」 「……エリザが、かな。ブル君あんまり人に心開かないでしょ?だから、今日ブル君があんなに喋ってるの新鮮だった」 本当は二人とも羨ましいのだけど、ブル君は乗せるのが比較的簡単なので、彼の機嫌を優先させる。私の行きたい店に大分付き合ってもらったし、エリザに会っている最中大分乱れていたからだ。エリザにからかわれていたのだろう。ブル君は機嫌が悪いとあんまり喋ってくれなくなる。それはつまらない。とはいえ、彼が私の前で機嫌が悪くなる時なんて皆無に等しかったけれど。 案の定機嫌の良くなったブル君の横を歩きながら、私は彼の言葉に相槌を打った。
せめてA
過去拍手御礼(2015.7.25-2015.9.25)
|