世界にたった二人
振り:準太 2014.4.12-5.9
title:確かに恋だった
私はいつだって押し倒される準備が出来ていた。私は用意周到だった。高瀬の目の前には保健室の真っ白なベッドとそれに座る私。私の右手には包帯が過剰にぐるぐる巻かれている。彼は真剣に私の怪我のことを考えているようだった。
「痛くない?大丈夫か?」
首を横に振ると、彼は少し安堵の表情を見せたけど、やはりまだ表情は固い。怪我は本当に平気なので、気にして欲しくない。そんなことより、もっと他に考えるべきことがあるのに。
私達の間は、彼からの一方的な気まずさで埋め尽くされている。居心地が悪くて笑ってみせたけど、無理に作った笑顔は余計に高瀬を追い詰めてしまったようだった。笑顔がひきつったのは右手が痛むからじゃなくて、楽しくもないのに笑ったからだ。
「…本当にごめんな」
「大丈夫。多分、高瀬が思ってる程痛くないよ」
ゆっくり右手を閉じたり広げたりしてみたけど、やはりさほど痛くない。動きがぎこちないのは絶対包帯のせいだと思う。
「養護の先生がいないからって、包帯無駄に使っちゃったね」
苦笑いで目を逸らした彼におかしくなって笑えた。やっと高瀬から緊張が少し抜ける。ふざけた口調で、包帯のせいで右手が動かないことを伝えると、安静にしていろと言われた。健全な男子高校生の優しさは、私の心にも少し安らぎを作る。だけどそれだけだった。それよりも私は保健室のベッドはやたら白くて、包帯も同じように白くて独特のにおいがする、そのことが気になっていた。
私はいつだって用意周到だ。
来るべき瞬間の為に、細部にまで神経を張り巡らせていた。
私達の間にまた静寂が埋まるけれど、私はもうそんなことどうでもよくなっていた。
「高瀬」
「ん?」
「…なんでもない」
拍子抜けするくらい普通だ。私と同年代の男の子って、もっと分かりやすいものだと思っていた。それとも私が不純なのかしら。誰もいない保健室。ベッドに腰掛けるクラスメートの女子。この部屋の鍵は内側からかけられるし、私は片手が塞がっているから余計に、その気になれば簡単に押し倒せる。その先のことだって、できる。なのに。
先程まで沸々としていた感情が急に冷えて萎んだ。私はなんだか気恥ずかしくなって、情けなくなって、高瀬から逃げるようにベッドに倒れた。私だけが用意周到だって、相手もそうじゃなかったら意味ないじゃない。
「どした?」
「寝てから行くことにする。朝からちょっと怠くて」
布団もかけずに高瀬に背を向けてそう答えるのが精一杯だ。 高瀬はそっか、と呟いて立ち上がった。私に彼の影が降りてきたのでそれが分かった。そして私の足元の布団を掴むと、やけに雑なやり方で私の身体を布団で覆う。ぼふ、という音と共に顔にまでかかった布団から僅かに抜け出すと、高瀬の男の子の手が私の頭を緩く撫でる。そして耳元で囁かれる。
「下着見えたけど、期待していいの?」