曲線美
黒執事:グレイ伯爵
R-15
2015.1.16



「優秀だね」

乱れた髪を整えて服に手を伸ばす彼女の背中を見つめながら、思ったことを素直に口にする。彼女が座るベッドの端のシーツがそこだけ滑らかな皺を作り、窓から月が冷たく照らした。ボクは一応下半身だけ布団の下に隠してそっと彼女に近付いた。

「いけません」
「あれ、意外だ。さっきまでもっと恥ずかしいことしてたのにね」
「仕事が残っておりますので」
「ボクは続きがしたいんだけど。ボクの言うこと聞けないの?」
「お身体に障りますよ、坊っちゃん」
「その呼び方やめろよ」

後ろから彼女を抱き締めるとボクよりも小さな肩に力が入った。

「私はずっと貴方様の下におります」
「何それ、誘ってるの?何なの?」
「抱きたいのでしたら、お好きなように」
「殺したいよ」
「お好きなように」


ベッドから降りて彼女と目線を合わせた。相変わらず厭らしい女だと思った。

「愛してるよ」
「左様ですか」
「だから殺さない」
「左様ですか」
、メイドみたいなこと言わないで」
「私は貴方のメイドです」
「…抱きたい」
「お好きなように」

何だか無性に悲しくなって彼女を押し倒した。シーツの波が新たな皺を作る。

「ボクはお前と生きたいんだけどなあ」
「貴族は貴族以外の方との婚姻は許されません」
「うん、それが間違ってると思う」

が何か言おうと口を開いたところをボクは塞いだ。熱っぽくて、赤くて、ふしだらで、だけどどこか可哀想だった。

「…子供」
「……?」
「子供ができたら、ボクと一緒になってくれる?」
「…私が、この屋敷を追われるだけですよ」
「そんなことさせない」
「坊っちゃん、」
「だからやめろって」
「チャールズ様、私は、分を弁えているつもりです。貴方様と私では、身分どころか、住む世界が違いすぎます」
「だから何」
「お諦め下さい」

柔らかく微笑むはボクの心臓をいつもこんな風に抉り取る。ボクはマゾじゃないけど彼女の溢す言葉にはいちいち興奮する。彼女の脚を持ち上げて肩にかけると、が驚いた顔をした。好きになってしまった今では、そんなのもいちいち可愛くて仕方がなかった。

「子供、作ろうか」
「坊っちゃん」
「だって、が言ったんじゃん。力ずくで手に入れろって」
「解釈の幅がお広いのですね」
「誉め言葉だね」

更に距離を詰めて彼女を抱き締める。

「君がボクの下になるのは、ベッドの中だけでいいんだよ」

が小さく溜め息を吐いてゆっくり瞼を閉じた。ボクは彼女の耳に舌を這わせて息だけで呟く。

「優秀だ」


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