灰になるまで愛せたらどんなに
都会の空は狭いと言うから、仕事終わりに明かりの少ないところへ連れてきた。車を飛ばして二時間、住宅地を抜けてどんどん人気のない道へ進んでいった時の、あのどうしようもない閉塞感は一生忘れられるものではないだろう。助手席に座るは至極嬉しそうに昨日借りてきたCDをかけた。俺が問えば、聴いたことのないロックバンドの名前を彼女が呟いて、それきり会話が途切れた。耳に残る激しい音が車内に広がった。言葉がなくとも、同じ空間を共有している事実が、俺を酷く安堵させる。
音楽のジャンルが合うだけで他人を好きになれるのだと思ってもみなかった。兄貴たちはいつだって俺を置いていった。だから、人の好意を好意だと信じる術も知らなかった。欲しいものは全て手に入り手に入れて、何が汚くて何がまっさらで、何が正しくて何が間違っているのか、模索する機会を自分で潰した。俺以外の誰かが俺自身に関与しようとするならば抹殺してよかった。

「ほら、星が見えるぞ」

窓を開けたが僅かに口元を緩める。ほんとうだ、綺麗ね。
適当な場所で車を停め、二人で外に出た。彼女の言う通り、都会で見上げるよりもここから見た方が随分広かった。俺に寄り添う小さな肩が震える。

「死ぬ直前みたい」

都会の空は狭い。だから大きな空が見たい。そんな感情を読み取れない程俺は落ちぶれていない。くつくつ笑うの手を握ったら昔の俺を思い出した。ぞっとするような冷たい背中を向けてしゃがんでいた。

「死ぬなよ」
「それそのまま返す。アーサー、死なないでよ。それに私は死なないよ。アーサーがまた一人になる」

隣に誰もいないことが日常すぎて、俺の思考の範囲外のものが日々俺を侵食していく。その感覚に慣れまいと彼女を遠ざける行為が勿体なく思えたのはどうしてだろう。むしろそれを必要としたのはいつからだろう。人は簡単には変わらない、変われない。

「帰ろうか」

変わらないままでいいと笑ってくれる人がこの世にどれだけいるんだろうか。抹殺するには惜しい、俺に沢山のものをくれる彼女が、「そう」なのだろうか。寒いと言って車に戻ったの背中は別に昔の俺みたいに冷たくはないけれど、俺と同じにおいがした。

「一緒に暮らそう」

帰りの車内でそう告げたら、どうして急なのとは泣いた。だから、一人にならないためだと教えた。一人が悪いと言ってるんじゃない。でも一人は寂しい。こんな簡単なことに誰も気付かない。寂しさにすら疎い。一人と一人が一緒にいたら一人じゃないと言ったのはだった。俺も、そう思うのだ。




になるまで愛せたらどんなに
2013.2.14
過去拍手御礼(2012.9.1-2013.2.14)
title:LUCY28