|
E means Ebb. APH:北伊 2011.12.23 Xmas企画2011 E means...? 「…この指の傷は何?」 まるでその箇所を誰にも分からせないように優しく撫でていたフェリの指が、突然爪を立て傷口を軽く抉った。痛みが集中し、顔を歪ませて小さく声をあげる。それを確認すると、彼は満足そうに目を細めた。口元が歪に弧を描く。 「痛い?痛いよねぇ。これ誰にされたの?」 「っ…じ、自分で…」 「え?」 「私の不注意なの…カッターで切っちゃって、」 「…ふうん」 私の傷からゆっくり手を離すと、今度は私を凝視し始める。怖くて、抉られた傷口に目を向ける。血が滲んでいた。 「お前は何も解ってないね。俺が知らないとでも思ってるんでしょ」 「なに、を…」 「昨日生徒会の仕事手伝ってほしいって、フランシス兄ちゃんがにお願いしてるの見ちゃったんだー。…兄ちゃん達のお手伝いしてる時に付けた傷なんでしょ?」 珍しく大きく開かれたフェリの目が据わっていた。可愛らしさなんて欠片もない。詐欺だと思った。最初は本当に普通だった。なのに。 何が彼を変えてしまったのだろう。 「…ごめんね」 抱き締めて私を離そうとしない彼に傷が疼いた。 「恐がらせちゃったね…ごめん、そんなつもりなかったんだけど…でもね、俺、が大好きなんだ。だから心配だったんだよ…その事は理解って」 「…うん、私もごめんなさい。気を付けるよ」 「……ねぇ。はこんな俺でも好きでいてくれる?」 「当たり前、でしょ?」 「そっかあ…そうだよね」 フェリの体からは心地よいにおいがした。先程までの彼から一変して穏やかになったので少しホッとしたけど、こんなのは一過性だということはちゃんと経験済みだ。何が起こるか分からない。 「あ、ごめん、俺用事思い出した。今日一緒に帰れないよー…」 「…そうなんだ、じゃあしょうがないね。また明日ねフェリ」 「ばいばい」 ふわふわ揺れながら彼は遠ざかっていった。あの軽やかな足取りが心にも反映されればいいのに。付き合いたての頃の優しい笑顔を取り戻してまた一緒に居られたら、私にばかり執着しないでくれたら。執着を拒むのはなかなか図々しいと思ってた。それだけ愛されてるって幸せなんじゃないの?だけど、そうでないことを知った。 詐欺だと思った。 エリザが急にショートカットにした時、ベルちゃんが上靴を買い替えた時、リヒテンちゃんが制服で学校に来なかった時、湾の携帯が無くなった時、越ちゃんの腕に沢山の痣が出来た時。 皆笑っていたけど私は笑えなかった。 心当たりが多すぎて信じられなかったくらいだ。もしかしたら。最悪なシナリオを想像して悪寒がしたのを覚えている。知らないよ、第一女の子に嫉妬とかしないし、そんな卑怯で酷いこともしない。彼にはそう言われたけど。 詐欺だと思った。 私のせい。フェリがおかしくなったのも、友達が傷付いたのも全部、私の。 用事があると言い私の元を一時離れた彼が、どうか、歪んだ愛に狂い、理性を履き違え、無遠慮で無慈悲な鎌を友人達に振り下ろすことの無いよう、ひたすらに祈った。神様、いらっしゃるのなら、どうか。 |