アーサーの声に振り返ると不安そうな顔の彼が部屋の前に突っ立っていた。私は短く返事をして読んでいた本をパタンと閉じる。 「?大丈夫か?具合、悪いのか?」 「…ううん、大丈夫。本を読んでいただけよ」 「電気も点けずにか」 「ああ…もうこんな時間なのね。急いでご飯の準備するね」 そっと立ち上がって彼の横を通ってリビングへ向かう。身体が重い。 「本当に大丈夫か?今日くらい俺が飯作るぞ」 「アーサーが…?ふふふ、食べられるものが出来るのかしら」 「髭みたいなこと言うなよ。それより、お前は休んでろ」 そう言ってからかうとリビングに入ってすぐにソファーへ連行されてしまう。大丈夫と言ったものの確かにちょっと辛かったので素直に横になる。暫くするとアーサーがあたたかい紅茶を持ってきてくれた。 「ありがとう…」 「…無理するなよ。もうお前だけの身体じゃないんだからな」 私の頭を撫でながら額にキスを送る彼に、目尻が熱くなっていった。 「…!?どうした!?どこか痛いのか!?それとも、」 「違う、幸せなの…」 彼が息を呑んだ。私は彼の方へ身体を傾けて、彼の体温に寄り添うように触れた。私は頬を涙で濡らしながら目を閉じる。 「アーサー、私のお腹、触って」 「え…」 「妊娠したって言ってから、一度も触ってないでしょ?」 彼の手には昔の傷があり、それが彼の過去を物語っている。多分アーサーは怖がっている。彼は優しいのに酷く不器用で、私のことも、すぐ壊してしまう、壊れてしまうと考えている。子供のことは尚更だった。私はアーサーの手を掴んで私のお腹に引き寄せる。 「ほら、ここよ、お父さん」 「ああ…」 「ぎこちないね」 アーサーがまだ膨らんでいない私のお腹をゆるゆると撫でた。優しくて大きな手が、温もりを確かめるように往復する。本当に安らかな時間だった。 そのまま彼と一緒に横になる。その小さな動作の時も彼の手が私の身体を庇うようにするものだから、どうしようもなく嬉しくなった。 「…さて、そろそろ飯の準備を、」 「いいわ、私がする。この子も私に作って欲しいって言ってるわ」 具合が悪かったのに現金な私の身体はちょっと元の状態に戻ったみたいで、私はキッチンへ向かう。アーサーが心配そうに私に付きまとうのが可笑しくてつい声に出して笑ってしまった。 |