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おかしい、そう思って左腕を見て、腕時計を忘れてきたことに気付いた。慌ててバッグの中を漁り携帯を取り出して確認すると時刻は午後12時4分。やはり、おかしい。待ち合わせまで一時間はあるはずだ。 昨夜遅くまで起きていたせいで案の定寝坊した。といっても待ち合わせは昼の1時だったのでちょっと頑張れば十分間に合うくらいの余裕はあった。そして気持ち急いで準備をしたせいか時間をかなり余してしまって、しかもその余した時間を上手く使える程私はまだイースとの関係に日常を感じていなかったので、この落ち着かない心のままに家を飛び出してしまったのだ。お陰でいつもよりも短い時間で駅に着いてしまってもっともっと時間が空いた。ただ待っているだけでは暇なのでちょっとブラブラしようと思っていたのに。 待ち合わせ場所には既に彼が待っていた。本当におかしい。イースは時間にルーズというわけではないけど、いくらなんでも早すぎる。待ち合わせの一時間前に来てただつっ立って待っているなんて非効率的なことをするとも思えない。一体何故。 待ち合わせ場所からは見えにくい場所から彼を眺めていると、イースが自分の腕を見て眉間に皺を寄せる。そこには多分、私と違ってちゃんと忘れずに持ってきた彼の腕時計があるんだろう。 これは、あれか。私が待ち合わせの時間を勘違いしていたのではないか。本当は13時ではなく12時だったとか。私は再び携帯を見る。遅れてきたとしてもまだ許容範囲内の時間だ、と思う。 私は意を決して彼に近付いた。 「うわっ」 「遅れてごめん!」 私の姿を確認するなり酷い驚き方をしたことは、私が遅刻したことに免じて許してあげようと思った。私はまともな挨拶もせずに謝罪し、彼の反応を見るために恐る恐る顔を上げる。 「は、何、早くない?」 「え?」 「待ち合わせまで一時間弱あるんだけど」 イースが腕時計を確認して怪訝そうな顔をする。 「イースだって、早いじゃん」 「僕は…別にいいでしょ。早く支度出来たから」 「私だってそうだよ」 「あっそ」 素っ気ない返事をされて謝り損を改めて後悔するも、遠慮がちに差し出された彼の手によってなんだかもう全てがどうでもよくなる。お腹空いてるから早く行こうと言うイースにご飯食べてないのと訊くと、そんな余裕なかったと返された。早く支度が出来たから早く来たんじゃなかったのか。まったく、素直じゃない。 |