|
「…駄目、ああもう、むりむりむり……」
が頬に集まった熱を冷ますように両手で顔を覆った。おいらも元気すぎる心臓をなだめながら深く息を吐く。 とキスをした。 アーサーが聞いたら呆れ、フランシスが見たら仕方がなさそうに笑うだろう。キスなんて、特にヨーロッパではさして珍しい行為ではない。ましておいらとは付き合っているわけで、などと堅苦しい言い訳で必死に隠しているのは余裕の無さだ。目を瞑っておいらを待つ彼女が愛おしくて、逸る気持ちを抑えてゆっくりと唇を合わせたつもりだ。おいらよりも彼女の方が緊張していたみたいで、時間にすると大体10秒弱くらいしたらさっと離れてしまった。まあ正直、その時はおいらも頭がどうにかなってしまいそうだったから、結果的に彼女に救われることになる。 でも、それはついさっきまでの話だ。おいらは自分のかさついた唇を舌で少し湿らせる。もう一回、したい。胸の内でじとりと性欲じみたものが滲み出る。 「…ルー君」 気が付いたら、彼女の頬を覆う手を剥がしていた。まだほんのり林檎色に火照る彼女に寄って、潤んだ黒い瞳を覗き込む。 「」 「……」 「…嫌じゃなかったら、おいら、もう一回にキスしたい」 彼女の肩がぴくりと動く。おいらはそれが良いのか悪いのか分からくて、でももう何だか我慢が出来ないというか本当に余裕が無くて吸い込まれるようにの唇を塞いだ。あたたかくてやわらかくて、のにおいがする。流石に舌を入れるのはどうかと思ったので純愛映画でも見ないようなさらりとしたキスだったけど、それだけでとても幸せな気持ちになった。 「…あ、ねえ、ちょっと、」 一度そう思うと変に舞い上がって、子供みたいに何度もキスを送る。くっついては離れて、またくっついてを繰り返すうちにがびっくりして泣いてしまったのに、それにすらぎゅっと胸が締め付けられる。 振り回されるのはおいらだけじゃない。
僕は呼吸ができる
title:金星 過去拍手御礼(2015.5.29-2015.7.25) |